12月27日(土曜日)

さてまた一日中フィルムセンターで小津漬けの巻。今日は「生まれてはみたけれど」、「若き日」、「和製喧嘩友達」、「朗かに歩め」の4本。いやーよかった。フィルムで観る「生まれてはみたけれど」は本当に魅力全開で、画面の上下一杯に子供の頭のてっぺんからつま先までを大きく映すショットを観ただけで大興奮。いやはやいやはや。「若き日」は現存する一番古い小津作品で、若き笠智衆も登場。ダメな学生を描いてるあたりがまだ若い監督の映画という感じでよかった。「和製喧嘩友達」は短い作品ながらも「出来ごころ」とも通じるところがあって、小津は同じような手をいろんな映画で何度も何度も使っていたことがよくわかる。と思ったら、「朗かに歩め」はまさしく彼の初期映画に現れているいろんな要素の組み合わせで出来ているような映画でとっても面白かった。そして主演の高田稔の二枚目ぶりに仰天。ちょっとダメ男な岡田時彦と比べると、高田稔はもっとストイックで華があって特別感が強烈だった。ヒロインの妹もすごく可愛かったし、相当観る価値のある作品だと思う。映画の後は、歩いて丸の内方面へ出てミレナリオを通り抜けてから帰宅。
夜BSで吉田喜重吉増剛造による小津番組がやっていたので一応観てみたけれど、かなり作りのいい加減な番組で気に入らなかった。小津と平和なんてテーマがまずナンセンスすぎるし(戦中の日本に反戦映画なんて撮れる場があるわけはなく、心ある監督の選択肢には超消極的な反戦映画を撮るしかなかったというのは当然の流れだと思われるので、小津の個人的な話としてはほとんど成立しないのではないか?)、番組の制作者はほとんど吉田喜重吉増剛造に投げっぱなしで、構成もなにもあったもんじゃなかった。よって、BGMにフィッシュマンズの「walking in the rhythm」を使ったのも減点対象となります。というかフィッシュマンズを聴いてれば事足りる内容だった。小津をネタに面白いことができる人なんて全然いないんだなぁ。
まあ昨日のサイードニューエスト・モデル聴いてれば事足りると言えなくもなかったんだけど(ああ言っちゃった…)。たった45分やそこらのテレビ番組が伝えられることって結局一言に要約できるようなものでしかないってことかも知れないし、もしくはNHKがただ堕落してるだけかも知れないけれど。一方でフィッシュマンズやニューエスト〜ソウルフラワーの音楽の誠実さはものすごいわけだしね。テレビはなぁ。