アルベルト・ジャコメッティのアトリエ展/ポンピドゥー・センター

明日で終わってしまう展覧会を駆け込みで。お隣の展示室でエリセ/キアロスタミがやっていた間は「ついでに」観る気にはなれなかったので、これでようやくゆっくりと。
http://www.centrepompidou.fr/Pompidou/Manifs.nsf/AllExpositions/D4AC49467474B7A6C12573B70052D98A?OpenDocument&sessionM=2.2.1&L=1
ジャン・ジュネの書物からとったタイトル、そしてそこから膨らませたテーマのもと、600点以上の作品が集められて展示された回顧展。そんな規模と知らずに入り口をまたぎ、会場を一周すると、ジャコメッティの全生涯に渡る作品をざざっとながら観終えた状態に至り胸が一杯に。
画家の父を持つジャコメッティは、子供の頃からやたらに絵が巧かった。印象派スタイルの油絵も、デューラーの模写も、文句のつけようがない。子供のうちに彫刻も作り始めていて、さらに幼い弟ディエゴをモデルにした頭像というのがあった。そしてその後もずっとディエゴの像を作り続けていて、彫刻になったディエゴはジャコメッティの創作のスタイルの変遷をたどると同時にだんだんとおじさんになっていく。ジャコメッティ本人もそれだけおじさんに。ひとつの時期のなか同じ造形をいくつもの作品として作り重ねていく様子は、芸術家の探求そのもの。どれが習作というものではなく、残された作品の全体から作業の緊張感が伝わってくる。とそんな流れを観ているだけでかなり楽しめる。
よく晴れた天気のおかげもあって会場はとても明るかった。日曜日だったのでたくさんの子供たちが楽しそうに見て回っていた。なにやらノートに描いてる子もいた。私も負けじとノートをとりだし、手元に残しておきたい「かたち」をささっと描いたりした。アトリエの再現を目指し、似た者同士(同時期の作品)でひしめいた空間は、とても活気があった。ポンピドゥーの常設でぽつんと見かける彫刻からもすかさず感じる強烈な人間くささをどの作品にも感じ、愛しく思った。
http://www.museesdefrance.org/museum/special/backnumber/0712/special02.html
お気に入りの一冊だったジャン・ジュネの「アルベルト・ジャコメッティのアトリエ」を日本においてきてしまったことが悔やまれる。こうなったらフランス語でと思ったのだけれど、本の作りが気に入らず20ユーロもするので断念。邦訳版は装丁もとてもいいです。