小津安二郎生誕百年記念シンポジウム

http://www.ozu100.jp/ozu2003.html
2日目の方に参加してきたので無責任な感想などを書いていきます。
まず、山根貞男を司会に、青山真治黒沢清是枝裕和崔洋一澤井信一郎の5人の映画監督によるトーク。だったのだけど、思い思いの小津への思い入れを熱く語るというものになるならまだしも、自分たちが映画を撮る上で如何に小津という存在がやっかいだったかという話が多く、そりゃその通りなんだろうけど、いろんな意味で彼らの力量のなさが感じられて残念だった。特に青山、黒沢の二人の話を聞いていると、ハスミンに追い立てられ観なきゃやばい!とか言いながら学生時代にさんざん観たけどなにがやばかったのか結局わからないまま今に至っているのではないかという感じがした。とは言え彼らは非常に正直ではあるわけで、話自体は面白かったのだけど、それにしても日本の監督達というのは小津という財産を全く有効に使えていないのだなということがよくわかってしまった。まあでもそれは映画監督が悪いと言うよりも、日本の映画界全体の貧弱さゆえのことだねきっと。
淡島千景は、私は結構好きな女優さんだと思って観ていた人でしたが、今は本当にただのおばあさん(見た目ではなくて話しぶりが)で、日本映画の女優さんというのはちやほやされるばかりでずいぶんと骨抜きにされてきた存在なのではないかとちょっと悲しくなった。でもその後出てきた香川京子はずっとしっかりとした人だったので一安心。
シンポジウム締めくくりに舞台の上にずらりとならんだのが、マノエル・デ・オリヴェイラ侯孝賢ペドロ・コスタ青山真治黒沢清是枝裕和澤井信一郎蓮實重彦吉田喜重山根貞男。加えて海外の批評家がちょこちょこと参加。日本人の監督達が、全く個人的な文脈でしか小津を語れず、彼らに興味のない人たちにとってはあまり意味のない話にばかりなっていたのに対して、オリヴェイラ侯孝賢は、多くの小津ファンと共有できる敬愛心溢れる言葉で丁寧に話をしていて、こういう場で話をするならやっぱりそうこなくっちゃと思った。山根貞男は全然よくなかったけど、吉田喜重の話は非常に素晴らしく、彼が映画の描写を言葉で語るのを聞くだけで涙が出そうになった。

それから小津とは関係なしに、このセッションの間にハスミンから青山真治への視線をなんとなく観察してみたところ、ハスミンは青山真治に対して、すごく喜んでいる部分もあるんだろうけど、もっと大きくなってくれよと不満に思っていることも多いのではないか、というようなことを感じた。結局のところハスミンの威嚇作戦は、ちょっとは良いこともあっただろうけど、いびつな結果ばかりが目立っているような。