sontag/pedro costa

ソンタグを読んでいたらペドロ・コスタの「ヴァンダの部屋」への賛辞としてちょうどよい文章を見つけたので引用します。自分でこういう風に語れるとよいのですが。

ロマン主義者たちは芸術を英雄主義の一種と、彼方への突破、超越と考えた。近代以降の大家たちも、それにならって、傑作とは極端なものであると――終止符であるか、予言であるか、その双方であると考えてきた。ヴァルター・ベンヤミンが(プルーストについて)述べた次の言葉には、近代以降に特徴的なものである「偉大な文学作品は必ずひとつのジャンルを樹立する、あるいは解体する」。真に偉大な作品は、たとえどんなに多くの先駆を持つとしても、古い秩序と決別するようにみえなくてはならない。それは健康的ではあるものの、破壊力をひめた動きでもある。そうした作品は芸術の境域を広げるが、芸術の営みを複雑なものにし、新しい黙視できない基準をおしつける。それは想像力を刺激し、また麻痺させる。
スーザン・ソンタグ土星の徴しの下に」富山太佳夫訳(晶文社)より。

どうかな。昨日読んだときよりはそこまでピッタリでもないような気がするけど。ペドロ・コスタの映画には多くの偉大な先駆の血が、見た目の印象以上に濃く流れているとは思っているので。
でも、真に偉大な文学、映画、芸術を信ずるひとをロマン主義者というのなら、ソンタグも、ペドロ・コスタもそうだろう。私はそういうひとの言葉を聞きたいし、そういうひとの作品と出会いたい。