2004年に観た映画

ながらく鬱々しっぱなしなので気晴らしに。今年映画館で見た映画の感想総括でもしてみます。少ないです。

ピーター・ジャクソンロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」:小さくか弱いホビットたちの頑張りに、どれだけ勇気づけられたか。辛いときはいつも、フロドとサムのことを思い出していたよ。

クリント・イーストウッドミスティック・リバー」:一番強く残ったのはやっぱり最初の俯瞰シーンだった。

マイケル・ムーア華氏911」:大勢の人に届くやり方で、とにかく親切に、というムーアの頑張りに素直に心打たれた。ドキュメンタリーとは、とか、映画とは、とかいう話はもうおいといて、映画が多くの人にとって生きる喜びや活力とつながるものであってほしい、という思いにこたえてくれただけで本当に嬉しかった。

ガス・ヴァン・サント「エレファント」:それぞれに不安を抱えながら、緊張しながら過ごす高校生たちと、それをじっと見守る視線。人間がいる、と思える大事な映画。

D・W・グリフィス「大疑問」:毎度のことながら、油断しているとあっけにとれる面白さ。グリフィス大先生の傑作のひとつ。

ダルデンヌ兄弟息子のまなざし」:こういう映画の誠実さを語れるだけの言葉が今はないです。しかし、すばらしいと思います。

ベルトルッチ「ドリーマーズ」:今のようにあまり体調のよろしくないときにはこういう映画のことを思い出したりはしないだろうな、という映画です。若く美しい人たちを撮らせるにはベルトルッチは悪くないと思います。

イオセリアーニ「四月」「歌うつぐみがおりました」「蝶採り」「群盗、第七章」「素敵な歌と船はゆく」:まあどれもこれも面白いです。鋭さで言えばだんとつ「群盗」ですが、好みでは「船はゆく」と「蝶採り」。人間だれしも持ってるはずのわけのわからない部分を押し殺しながら生きなければ頭がおかしい人だと思われてしまうような、だれもが同じであることを期待されがちの国に住む者としては、これぐらいのへんてこさが普通だといいなと思う。そうなったらそうなったで大変そうだけれども、そっちのほうがいい。

エルマンノ・オルミ「ジョヴァンニ」:誠実さ、真摯さのカタマリのような映画。ですが、最初と最後によけいな言葉が字幕で入ってしまう。それをちゃんと映画で見せてくれればいいだろうと思うのだけど、本編はとても寡黙な映画なので、多少の親切は仕方がないのかなとも思う。

オリヴェイラ永遠の語らい」:95才まで生きて、美女たちを相手に映画を撮るというのはどんな感じなんでしょうか。

ペドロ・コスタ「血」「溶岩の家」「ヴァンダの部屋」:明らかなる才能とそれに熱狂的に群がる日本のシネフィル。という構図をはじめてリアルタイムで見ました。「溶岩の家」は「骨」とともに必見映画の仲間入りです。映画がまた、生き延びたってわけだ。

トリアー「ドッグヴィル」:文句を付けても徒労に終わりそうなところがますます憎たらしいトリアーさん。下手に評価されると不安になるので、やるならもう徹底的に嫌われるような映画つくってほしい。

北野武3-4x10月」「あの夏、いちばん静かな海。」「キッズリターン」:最高だった。ユーレイ。

侯孝賢珈琲時光」:東京を撮った映画1。具体的に分かり過ぎるとよい鑑賞者とは言えない状態になってしまうものなのか。

是枝裕和「誰も知らない」:東京を撮った映画2。いいところも、悪いところもある映画だと思うけど、前の3本と比べたら大進歩。本物の映画監督になれるかどうかはここから。これが渾身の1作でしたで終わってしまっては淋しすぎる。