ジャック・リヴェット「Out 1 : Noli me tangere」1971年/仏

ついに12時間版。今日は398分分観てきました。
4時間版を観たときは次から次へ出てくる登場人物を追いかけるだけで必死でほとんど台詞なんて聞こえてなかったのだけど、内容がどんなものかわかってから観たら台詞がずいぶん聞けた。たった2、3週間だけどその間にも少しずつ成長できてるのだなあ。まあ長いぶん他愛もない台詞が多くなったのかも知れないけれど。でもその他愛のなさにも助けられてこの長さが全然苦痛でなく、4時間版よりずっと楽しめた。
2つの演劇グループ、13人組に入りたいコラン(レオー)、サイケショップ店主エミリー(ビュル・オジエ)、小さな泥棒フレデリック(ジュリエット・ベルト)、それぞれの物語が並列して語られ、交錯する。12時間もあるのでひとつの場面に使える時間もたっぷりある。これは観ていて安心。4時間版とは正反対だ。まだまだ先は長いから今のうちになんでもやって、と、こちらも気が大きくなる。4時間版だとそのバランスがあまりよくなく、12時間版のものをそのまま使って冗長に感じたところも、12時間版で観ると全然短かくまとまって感じられたりして面白い。
演劇グループはどちらもアイスキュロスの悲劇(「テーバイ攻めの七将」と「プロメテウス」)の準備中。片方はリズムにのって体を動かしたり大声上げたりしながらの表現。原始的で楽しそう。踊りをひとつ覚えてしまったので、家に帰って真似してみた。もう片方ではプロメテウスの苦しみをつかもうとあれこれ実験的な即興をやりつづける。彼らの稽古の風景は結構長く映し出される。観てるとちょっとつかれるので、ついふっと気を失ってしまった…。
レオーはどの場面でも完璧にレオー。そして素晴しくかわいい。レオーのための映画かと思う。ジュリエット・ベルトのための映画でもある。大きな目。細い体。この映画がリヴェット映画になる一番の貢献者。ビュル・オジエがもっとメインで出てくるシーンはおそらく明日。楽しみ。