ジャン・ルノワール「大いなる幻影」1937年/仏

今日映画館で観られる映画をDVDで。ずいぶん前に観たきりで、記憶に残っていたのはいくつかの画面だけだった。その間に多少ともドイツ語とフランス語を聞き取れるようになったこと、フランス人についても理解が進んだことは、この映画を観るにはそれなりに大きなことで、前観たときには分からなかったであろう細かいこともだいぶ分かった。嬉しい。
映画前半、最初の捕虜収容所でのこの楽しさはものすごい。なにしろそこには、ジャン・ギャバン、マルセル・ダリオ、ガストン・モド、ジュリアン・カレット、みんないる!! ドイツ軍の陣地にあって、言葉、食べ物、規則、服装と、生活の中心にあるものが全て制限され不自由するフランス兵たち。その彼らとドイツ兵との間でテンポよく2つの言語が行ったり来たりしつづけるかけあいがとっても愉快。左右に並んで貼られた独・仏新聞も仲良くやりあう。ケッサクなのは食事に関するシーン。そんなルノワールの方法は、ドイツびいきの人間にだってここちよく、心許せる。こんなところにいるけど俺たちはこんなにもフランス人なんだと、自分たち自身でもにが笑い気味にじたばたしつづける姿にはすっかり頬も緩みっぱなし。
そうこうしてるうちに移された第二の収容所では、貴族階級の軍人2人のやりとりの素晴しさがまっている。ドイツ軍側のシュトロハイム、上品なフランス語もよかったけれど、貴族の共通言語として使われる英語によって語られる自らの言葉に、摘み取られる一輪のゼラニウムに、なみだ涙。の少し前に、劇中最大の名場面をみせてくれたフランス軍側の笛の大尉ピエール・フレネーにもブラボー! とそこらへんでハイライトは終わってしまったので、その後の脱走劇はジャン・ギャバンのためのおまけと思う。ジャン・ギャバンは大事な主役だものね。この映画のジャン・ギャバンはとても素敵。
世界的な有名作ですけれど、改めて、素晴しい、「ゲームの規則」とも対になる、大事な一作だと思いました。
それにしても、この映画のなかのシュトロハイムの造形は、「ジェダイの帰還」のダース・ベイダーの中身に見事にそっくりだった。
http://fr.wikipedia.org/wiki/La_Grande_illusion