ピエール=ローラン・エマールによるバッハ『フーガの技法』@Cite de la musique

家からすぐ歩いて行ける場所に、パリ音楽院とクラシック音楽向けコンサートホールがある。いつもはそこを素通りして、奥のライブハウスばかりへ行っていたのだけど、ついにホールに音楽を聴きに行ってきた。思っていたよりこじんまりとした中ホールで、交響楽を聴くには小さすぎるサイズ。お隣に、4年後の完成を目指してフィルハーモニーホールを建設準備中なのもこれで納得できた。ちなみにコンペで勝ったのはジャン・ヌーヴェル。http://www.philharmoniedeparis.com/
今日聴いてきたのは、パリ音楽院でも教えているフランスのピアニスト、ピエール=ローラン・エマールの演奏。午前の部は解説付きのミニコンサート、夜は全曲演奏という構成だったのだけど、午前の部は子供でも気軽に入れる安い値段設定だったので、そちらへ行ってきた。やはりパリ音楽院で教えていると思われるまだ若そうな男性とエマール自身による解説をはさみつつ、エマールがバッハ『フーガの技法』から何曲か弾いてくれた。
こちらへきてからことあるごとに思うのは、教育的な立場にある人はみな教えるのがとてもうまいということ。上からものを言わず、大事なことを惜しみなくさらりと伝えてくれるので、気持ちよく納得しながら学ぶことができる。本質的なことはほとんど何も教えてもらえないような教育ばかりの日本と比べると、恐ろしく恵まれているなと思う。
今日の場では、複雑な『フーガの技法』の秘密について、少しずつ分かりやすいところから語り始め、すぐにその場で実演、ということが繰り返された。解釈者自身によって譜面の豊かさがぼんぼん引き出されつつ、明確な音によりわっと立ち上がる『フーガの技法』に、心動かされずにはいられなかった。
ホールを出て併設されているCD屋さんをのぞくと、録音されたばかりのエマールの『フーガの技法』のCDが置いてあったので、1枚連れ帰ってきた。今日の演奏会は、いつか取り組むことになるだろうと温めてきた難曲とついに向き合った今、というタイミングでのものだったのだと知る。CDでは未完に終わった楽譜の最後の1音まで演奏されていて、ちょっと特別な余韻を残している。
http://www.universal-music.co.jp/classics/release/m_topics/umcl200801/uccg1386.html
http://www.kajimotomusic.com/artist_jap/pierre-laurent_aimard.html
http://fr.wikipedia.org/wiki/L%27Art_de_la_fugue