アキ・カウリスマキ『ラ・ヴィ・ド・ボエーム』1992年/フィンランド・スウェーデン・仏・伊

1992年という年がものすごく遠くに感じられた。この素晴しいマッティ・ペロンパーはどこにもいないし、レオーも今ではこんなふうに映画に出ることはないだろうし、どこでもないパリの場末も一緒にどこかへ消えちゃった。でも同時に、1992年の時点ですでにないはずの場所を、ないはずの映画の中に描いた映画というふうにも見えた。カウリスマキの映画はいつも、いつかどこかの闇の中でちいさく輝いているマッチの光のようだ。