ジャン・ルノワール『ボヴァリー夫人』1933年/仏

ボヴァリー夫人』の映画は、パリにきてから3本目。まずオリヴェイラ、それからミネリ。そしてこれ。
フロベールの『ボヴァリー夫人』を映画にするには話をかなりしぼらなきゃいけないし、残すべき部分というのも最初からほぼ決まっているようなものなので、映画に向いているとはだれも思わないだろうけれど、それでも映画にするというならば、やっぱりルノワールだったな、と、浮浪者のシーンやイポリットのシーンをみて思う。映画に描きたいところがあれば、立ち止まってじっくり描く。というようなテンポになっていたのはしかし、3時間以上あったオリジナルが105分に縮められたせいであったか。昨日は、シネマテークで2005年に修復した版の上映だった。それでもこの長さ。
依頼人(有名出版社社長)の愛人を主演に仕立てたこの映画では、エンマの美しさを堪能する楽しみが残念ながら味わえない。それでも後半部分の貫禄あるエンマにはぴったりで、意外といいなと思ってみられた。シャルル役にはイメージとはまるでちがうピエール・ルノワール、でしたが、彼のあの放心した演技は最高だった。
ヨーロッパの映画っていうのは、19世紀の遺産が人や環境に贅沢に重なったところに、ものすごいものが現れるんだなと思わされてばっかりだ。その蓄えも、もういいかげん尽きてるようですが。今年100才になる人をのぞいて…。