ダニー・ボイル『スラムドッグ$ミリオネア』2008年/英

運河沿いの映画館にはほどよく人が集まって、盛り上がっていました。オスカーをもらったダニー・ボイルはすごくいい顔してたしスピーチもとてもよかったから、すっかり信頼して最初から安心しきった状態で、ほとんどずっと涙目で観ていた。クライマックスでふわっふわに気もちいいトランスの曲が鳴ると、それまでに勢いよく語り重ねられてきたことが全部そこに流れ込んできて、何度も揺さぶられた感情が溢れ出した。今年のアカデミー賞がこの映画でよかったなーと思って、遠慮なく泣いた。最後はあたたかい拍手とともに幕。夜のニュースでは、小さなテレビに群がりアカデミー賞受賞の報にわくムンバイの子供たちの姿が映し出されていた。同じ1日の間にあった熱狂とともに観られたことを、嬉しく思った。
母は『トレインスポッティング』のことを、ひとがトイレに入っちゃう映画と言っていたけれど、これではもっと強烈にそれがあった。ダニー・ボイルなんて『トレインスポッティング』以来なんにも観てなかったし、あの映画で「ボーンスリッピー」が突如として有名になっちゃって複雑な思いもあったけど、今となってはただもう懐かしい。それまでアンダーワールドとくればCDレコードなんでも買ってたから、「ボーンスリッピー」は何種類も持ってたよ。