Tetro

上映開始の30分前に今日もう観てしまおうと思い立ち、コッポラの新作『テトロ』を。2008年のブエノスアイレスが舞台。世界的な名声を得た芸術家を父に持ち、長男で、過去に家族内であれこれとあり、ときくからにめんどくさそうなものが何重にも張り付いてしまった人を、ヴィンセント・ギャロの体をつかって表した映画。前半、小さめのエキップで撮ったと思わせるような、白黒と光と影と街の背景を活かし雰囲気ある、情報量も限られて謎めいた感じが、かなりよかった。に対して後半、ドラマが展開し思いがけず規模も拡大して、前半の印象を保つためには妄想か幻覚であってほしかったようなことが強固な現実として示されると、なんだかもったいないような気がしてしまった。
それでも、つべこべ言わずまずは観てこいと言えるものはたくさんあった。ギャロがちらちらと映画狂として描かれていたのは、話の筋と全く関係なかったけど、映画を深読みする材料ぐらいにはなっていたのかも知れない。という楽しみも。そもそも映画館へ足を運ぶこと自体が、もう観る前からその映画や作者への興味と愛情を表現し、この映画観たよ!と言うだけで十分に積極的な態度になっているのだよなあと、久々に思える体験だった。