Le beau est toujours bizarre.(Baudelaire, cité par Straub)

友人に会いにいくつもりで、友人の通う郊外の大学へストローブの話を聞きに行く。つい先日ポンピドゥであったストローブの新作上映へは行けなかったので、それについての話をなるほどと聞けなかったのは残念だったけど、話し振りを見ているだけで大変面白かった。新作はコルネイユブレヒトのテキストを使った作品だったようで、学生からブレヒトの用語「異化」に触れた質問が出ると、原語「Verfremdungs」の仏語訳「distanciation」も英語の「alienation」も誤訳だ!!異化ってのはこうこうこういうもんであってdistanciationではない!と立ち上がって大きな声でしゃべったりして、最高。高圧的でも、怒ってるわけでもないから、反論の出るようなことをわざとぶつけて、違う違うと力をいれて話させるのが一番面白いんじゃないかと思った。一貫して何事も常に根本から問いながら固有の美を作り続けてきた人に対しては、もう何も言うことがないので、好きにしゃべってくれて一向にかまわない。それが自由で楽しい。複数言語の中に本腰入れて身を置いてきた人であることも重要で、尊敬すべきところだし、なにより憧れる。ドイツ語、イタリア語、フランス語、それぞれの言葉でしか言い表せないものをストローブはたくさん持っていて、それぞれがそこから人間の歴史と深くつながっていくことを知らせてくれる。そんなことを学術的な方法ではなく、芸術作品として表現してきたというのは、ヨーロッパ人とて並大抵のことではないと思う。
久々に会った友人とカフェで近況を交換し、近くにある大聖堂や街の中心を散歩。話は尽きず。帰りはバンリューをぐるりとまわるトラムに乗る経路で帰宅。雨が降っていてとても寒かったけれど、行ってよかった。