サンマルタン運河沿いのmk2

家からふらりと歩いて行ける距離に、mk2(エムカードゥー)という独立系映画配給会社のシネコンがあります。今ちょうどガス・ヴァン・サントの映画が観られるというので、日曜日の夕方に観に行ってきました。

じつは私が住み始めたここ19区は、パリのなかでもあまり治安がよくないと言われている地域にあたります。と言ってもこの家や最寄り駅の周辺は誰でも住みやすそうなのんびりした雰囲気で今のところとくに何の問題もなく、もっと評判の悪い場所でも時間をまちがえたりよっぽど気を抜いたりしなければ別に大丈夫だろうと思ってはいます。東京ではとても身近だった池袋や新大久保と思えばなんてことはない。
それでもこの日行ったシネコンはそういう方面へ向かったところにあり、とにかく初めてだったので多少の緊張感と共に歩いていったところ・・・。

こちら岸にmk2。そしてあちら岸にもmk2。

たっぷりの水がゆったりゆれている運河沿いにmk2が向かい合わせに2件並んだ風景にいきなり大変心奪われ、しばし感激。こんなすてきなところとは!

ここを訪れ映画館に併設されたカフェに集まっている人たちも、ガス・ヴァン・サントに並ぶひとたちも、みんなとっても自然で感じがよさそうな人ばかり。予想外の雰囲気のよさで、こんなところでガス・ヴァン・サントが観られるなんてとっても幸せ。

と思っていたら、さらに幸せな発見。ここへ映画を観にきた場合、自分が観たい映画の上映場所は運河のこっち側かもしれないし、向こう側かもしれない。でも近くには間をつなぐ橋はここにはない。さてどうするのかな。と思って運河を眺めていたら、向こう岸からやってきたのがこんなかわいらしい渡し船

今日映画を観る人/観た人なら無料で、映画を見ない人でも50サンチーム(75円)で乗ることができる。と書いてある。そしてこの船の名前は・・・、

ああなんと、zero de conduite(「操行ゼロ」号)!!!
ジャン・ヴィゴの「アタラント号」は撮られたのは、そういえばこのサンマルタン運河だった。だから恐らくそのことに敬意を表しているのでしょう。(じゃあなんでアタラント号ではないのか。船の形が全然ちがうから??) それにしても、これは嬉しい!!

と、すっかり盛り上がったのですが、この日は用心してあまり余計なものを持たずに家を出たために、次の日再び写真を撮りに訪れたのでした。映画を観た日の帰りはすっかり日が暮れたあとで、夜景もとってもきれいでした。でも怖いことなく無事帰宅できました。