ロベール・ブレッソン「ブローニュの森の貴婦人たち」1945年/仏

この映画にとって結構大事なことが、コクトーが書いた台詞によって語られており、前に観ているとはいえだいぶ忘れていたので、ブレッソンをフランス語で観るのはやっぱりまだ辛かった。
ので、画面をじっと見る。娘に苦労をさせながらも、きれいな身なりをやめない母の恐ろしさ。ぼろのコートを着続ける娘をみる度泣けてくる。マリア・カザレスの憂鬱な表情で終えるいくつかのカットといい、マリア・カザレスのアパートの扉の透けたエレベーターからちらりとのぞく不穏な顔といい、人と別れた直後に登場人物たちがみせる固い表情がすごい。化粧の濃い踊り子アニェスが2度見せる踊りの場面では、躍動感より違和感が勝る。この容赦なさ、厳格さ、徹底した見せ方は、ブレッソンの映画でしかお目にかかれないもの。みなこれに参ってしまう。記憶にも、物語より映像ばかりが残っていた。
私の右側にも左側にも、親につれられた小学生くらいの少年が座っていた。フランス人にとってのブレッソンはそんな映画なのだろうか。