アッバス・キアロスタミ「FIVE」2003年/イラン・仏・日

小津安二郎に捧げられた作品。
長回しワンカットが5編、全74分。そのうち4つは大海の波の動きと音が途切れず続く。1つめは波打ちぎわの丸太編、これぞキアロスタミ。まさか木の切れ端をみていてにやけるとは思わなかった。2つめの柵編、歩き慣れた歩道を行く人々の奥では、いちいち劇的に割れては崩れ落ちる波の姿。3つめの犬編、波でしましまの海に白い空がまぶしかった。4つめはアヒルくんの行進編、バックの波の画と音とがこの映像の試みを保証していて感動する。足音のぱたぱたがまた愛らしい。5つめの水たまりと虫の声とお月さま編、やかましくオドロオドロしく激しく美しい、自然にかえった人だけが目撃できるような、とは言えアジアならそこらじゅうにありそうな、自然。そしてコケコッコーで朝がくる。犬も吠える。わん。
なんのこっちゃかわからないと思いますが、ミニマルながら一瞬も目が離せない感動巨編です。DVDの粗い画像での上映だったのが残念でした。