ルイ・マル「恋人たち」1959年/仏

モノクロ作品。
登場人物たちがバラバラの事情を抱えながら一同に集う、ディナーのシーンが素晴しかった。誰よりも、使用人のガストン・モドが。彼を観ているだけで涙が出そうになった。不意に入って来た鳥を追い出す場面、ディナーを終え一同が食堂から出るのを見届けてから自分も1人去る場面、そして最後の最後でみなが館の前にたたずむ場面でも、画をひっぱっていたのはこの人の佇まいだった。
そのディナーの後。偶然出会ったばかりの、ガタガタいう小型の車でやってきた、この場では若さの象徴であるような男性と共に、ジャンヌ・モローは夜の森へと入っていく。La nuit est belle. La nuit est femme. 髪がほどけ、月明かりに体の透けた白いネグリジェ姿のジャンヌ・モローは美しすぎた。小舟まで出てきて幻想的、かと思えば、その後の展開はちょっと見せ過ぎとも思ったけれど、全てはそのまま最後までぶっ飛ばして行くその流れの中にあった。周りのあっけにとられる様には、笑いもおきる。不安な面持ちながら前向きな言葉で終わってはいたけれど、あのガタガタ車にさてどこまでたえられるかな。