ジャン・ルノワール「ゲームの規則」1939年/仏

去年映画館でみたときは台詞がほぼ分からず置いてけぼりを食った気分になったのでそのリベンジを、日本語字幕付き500円DVDで。画面が明るすぎるのが難点の。
映画史上最高の作品のひとつに数えられている「ゲームの規則」。フランスでは数年前バカロレアの課題のひとつに指定されたため、シナリオの文庫本と専門家が10人がかりで書いた解説書が出ています。只今私はリセエンヌになったつもりでそれらを使った学習を1人進めているところなのですが、この映画、シナリオを丁寧に読むと一気に理解がすすむことに気がつきました。
なにしろこのくせもの映画は、いったん動き出すとかなり濃厚な時間空間がどどーっと進み、鍵となる台詞や人物関係が何気なしに、こっそりと、しかし実際のところはおおっぴらに、交差して交差して交差した果てに、、、、FIN!と出る。画面の奥行きを使った動きの面白さや、正直者ぞろいの人物の魅力はすぐにでも伝わるものの、はたしてどの程度まで観たと言えるかという不安が残ってしまう。ところがこれを、文字に起こしたもので読んでみると、その緻密さが手に取るように分かって非常に興奮させられました。ミュッセ、マリヴォー、ボーマルシェを参考にして書かれたという脚本、性格付けされた人物たち、そして彼らが演じる物語の全てが、バカロレア対策でもなんでもとにかく真剣に向き合い細かく分析されるにふさわしい、文学的、芸術的な厚みを持った傑作だということが、さっと映画を観ただけではわかりにくい部分も含めて、これできれいに理解することができるというわけです。(ちなみに、私が今の時点で目を通し終えているシナリオというのは、岩波ホールのパンフレットのものなので、日本語です。フランス語は途中まで…。)
解説書の方もまだまだ読みかけながら、たまらず映画を観てみると、ついにというかやっとというかで、全体像をはっきりととらえることに成功!!という実感が。そんな余裕の視線のなかでは、マルセル・ダリオ演じる伯爵の立ち振る舞いが際立ってみえた。自分に自身にも、自分の階級にも正直であろうとするが故に苦悩しながら、最後まで自分の舞台で演じきる彼の姿の、なんと切ないこと。そして、伯爵とは裏返しの関係にあると思われる、密猟者マルソーもまた同じだけ興味深く眺めることにもなった。

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今東京では、2005年のシネマテークでの企画が元になったルノワールの展覧会と特集上映が行われてますね。
http://www.ntv.co.jp/renoir/index.html (展覧会)
http://www.ntv.co.jp/renoir/movie2.html (特集上映)
残念ながら私は完全に行き違いになってしまいました。今日も明日もあさっても、「ゲームの規則」含めてあれこれ上映されてるようなので、東京にいる方はぜひ、字幕付きでルノワールが観られる幸運を噛み締めてきてください。ルノワール映画のフランス語が全て聞き取れるようになったとしたら、それはフランス語の勉強をやめていい時ではないかと思っております。