ジャン・ルノワール「この土地は私のもの」1943年/米

原題「This land is mine」。仏題「Vivre Libre」。また別の邦題「自由への闘い」。ルノワールアメリカで作った映画のひとつで、脚本は、フォード、ホークス、ラングとも組んだダドリー・ニコルズとの共作。
第二次大戦中、ドイツに占領されたヨーロッパのとある街を舞台に、順応と抵抗との間で揺れる人々を描く。アメリカでアメリカ人へ向けて撮られながらも、フランスへのひたすらな思いがどの画面からも伝わってきた。時が時であり、ギャグへも転ばず、徹底して誠実さを示す。それを観ている方としては、もう最初から半泣きだった。
物語の展開はそのまま、小学校の教師であるチャールズ・ロートンの身に起こる変化に直結している。生徒からもばかにされるような臆病者だった間抜け教師が最後には、チャップリン「独裁者」(1940年)に続くかのごとく、聴衆を前にストレートなメッセージを表明するに至る。その全てがチャールズ・ロートンの(ちょっと漫☆画太郎入ってる)ぷにょぷにょの体と表情により表現されているというのが、この映画が格別であるところ。ルノワールの映画にはまるで抵抗できない従順な私は、すっかり別人となり現れたチャールズ・ロートンを生徒たちが真剣なまなざしと涙で迎えるのが映し出される直前から、またボロボロと泣いてしまった。