エリッヒ・フォン・シュトロハイム『グリード』1923/1999年/米

一大長編を撮ったものの編集でさんざん切られて5分の1ほどの長さになって公開されたことで知られる、しかしそんな状態でも大傑作であることには変わらないというおそろしい映画。この日観られたのは、シュトロハイムが目指した姿を、ありったけの資料を集めて綿密に作り直された4時間版。とはいえ一度失われたフィルムはどうやってももどってこないわけで、大部分がスチール写真と字幕による修繕だった。それでも、人物の相関図やオールロケの魅力は拡大し、そこには西部開拓時代がまだリアルにあったような様子もみられたりして、全体のスケール感はぐっと増した形になっていたと思う。それに、たとえどれだけ分割されても、全体が目指したものの巨大さは、どんな細部にも宿っている。そのextraordinaireな大きさになんども出会っては圧倒され、感激して、映画が終わり修復スタッフの名が流れたあとで映し出された監督の写真を前に、なんて人だ(尊敬)!と思うほかなかった。規格外な美に目がないフランス人が、シュトロハイムを長らく支持してきたことにも合点がいった。&過酷な撮影に最後までつきあい演じきった主演の俳優さん(http://www.petergowland.com/PGpast.html)も、立派なものであったと思う。
シュトロハイムを観ずして一体何を、という日々はこれにて。1本の映画が5本分にも10本分にも感じられるような、贅沢な時間を堪能できました。