ジャンヌ・ダルク

ジャンヌ・ダルクの映画を2本。無声映画時代のセシル・B・デミル版は、壮大な規模でジャンヌ・ダルクの物語の全貌を描きつつ、イギリス軍人とのロマンス、現代(第一次大戦時)との入れ子構造など、さらなる見せどころを取り入れたどん欲な大作。1910年代の作にして、ジャンヌ・ダルク映画の決定版と言える。時は下って90年代。誰もが自分のジャンヌ・ダルクを持っているんだと語っていた、リヴェットの撮ったジャンヌ・ダルク。リヴェットは、ジャンヌ・ダルクが火あぶりにされた場所としても知られる、ルーアンの出身者。リヴェットのジャンヌ・ダルクもたっぷりと時間をかけて、戦地へ出向く直前から処刑されるまでを描いている。面白いのは、そこに描かなかったものがあるということ。予算の都合も当然あっただろうけど、デミルが撮ったような戦いは描かれないし、裁判のシーンもひとっとび。それがみたいなら、デミルやドライヤーやブレッソンをみればいいからねと言われているような気になった。リヴェットのジャンヌ・ダルクは、丁寧に用意された衣装や小道具をみているだけで全然飽きない。繊細な細部が、冬の空気とリュプチャンスキーのカメラに映える。サンドリーヌ・ボネールの演技しかり。彼女が演じたことで、無二のジャンヌ・ダルク映画になってる。