アルフレッド・ヒッチコック「汚名」1946年/米

バーグマンはあの猫の耳がついたみたいなかわいらしい髪型に背中のあいた黒いドレスを着たまま、永遠に映画の国にいるに違いない。と思った。
映画史上最重要作品のひとつなので部分的に観る機会は幾度となくあったけど、全編通して観直したのは恐らく中学生の時以来。なんでもいいからヒッチコックのビデオ貸してと叔母に電話して出てきたのが、これと「バルカン超特急」だった。Elle etait mon Langlois... 「おめい」なんていう聞き慣れない言葉を聞いてゲラゲラ笑ってしまったような頃の話。
ヒッチコックの画面作りやサスペンスの部分は子どもの目にもびっくりするほど面白いけど、今観て面白いのは恋愛がらみのシーンだったりする。当時の規制を逆手にとって撮られたというキスシーンもそうだし、悪役のクロード・レインズと母のコンビがからむ後半はもう全部最高。ラストシーンも強烈。ほかが出来すぎてるからもうケーリー・グラントなんてただいるだけで十分だったしそれでよかった。背中しか写してもらえない登場シーンからしてへんな距離があっていい。
どのシーンも観てるそばからあれこれ言いたくなるので、やっぱりヒッチコックの映画は家族でわいわい観るのがいいなあ。
ちなみにシネマテークのフィルムの状態は完璧ではなく、あちこち欠けていてちょっと残念。シーンが終わりきる前にぶつっと切れて次に飛んだところが数カ所。誰かもって帰っちゃったんでしょうか。もしかしてトリュフォー