黒澤明「七人の侍」1954年/日

明日から約3週間のヴァカンスに入るシネマテーク2006-2007年度最後の日、古典映画の枠にかかったのがこの映画だった。あの大画面で観られるならということで行ってきた。生涯2度目の「七人の侍」はまたスクリーンという幸せ。
斜めに入るオープニングの文字と音楽からして、この映画にかけた気合いが伝わってわくわく。前半の侍集めはほんとに面白くて、人の顔をみてるだけで飽きない。まあなんといっても左卜全左卜全の与平が「米盗まれたあ…」「もう一握りしか残ってない…」と言って、床に散らばる米をひろうシーンの物悲しさはすさまじいです。
どろどろの土、どっさり降る雨、荒々しい風、舞い上がる砂、鬱蒼とした森、さわやかな小川、お米を育む田んぼ、真っ白な米、惨めでみっともない人間の姿。泥臭さと溢れんばかりの生命力がたまらない。その中心に三船敏郎の菊千代がいる。ほとんど裸の姿に、後ろを向くと現れる尻に、フランス人も喜んでいたと思われる。
鰯雲」「杏っ子」の木村功も、七人の侍だったか。一人青春侍。このときはこんなにきれいな顔してるのに、あんなに嫌みな役の出来る俳優になったなんて不思議。
ああそして「次郎長三国志」で豚松やってて「七人の侍」に出るために殺されたという加東大介は、そのまま魚を背負ってやって来た。登場シーンに志村喬に言われる一言が「はっはっは、貴様生きとったのか」。「次郎長」とつながってら。けどマキノファミリーから抜け出し黒澤組では緊張ぎみの面持ちで、そこまでの見せ場はなかった。
後半は野武士との対決。戦いの準備、農民と侍の交流、青春の一幕、そして決戦。見せ場の連続。クライマックスの雨もますます容赦なかった。隣に座ってたおじいさんは、人が切られる度嬉しそうな声を挙げていました。
けどよ、ここまで3時間を越えてこーんなにも面白かったのに、最後の最後でなんであんなつまらない台詞を入れてしまったのか。この映画ではあまりそのようには描けてなかったと思うし、その台詞を言うがために余計に死んだ人もいるように思えてしまう。と前回観た時にも思ったけど、やっぱり思った。