エミール・ゾラ『獲物の分け前』1871年

映画以前、フロベール以後に位置した小説、ゾラの『獲物の分け前』(ちくま文庫)を読んでみた。古いパリが一気に新しいパリに文字通り作り替えられていく、ナポレオン三世オスマン時代を生きた人々の欲望のぶつかり合いで、ものすごいバブルのパリが描かれている。冒頭、中盤、折り返し、後半と、物語の怒濤の流れと細かく語られる事柄の配置がよくよく練られていて、フロベールの慎みはここにはないけれど、感心しながら読み終えた。19世紀のフランス文学は、揺れ動き続ける時代の背景とそこにいる人の人生の激しい対比でできている。なにもかもが流動的で、いつだって誰の思い通りにもならない世界。というのは今も同じ。

獲物の分け前 (ちくま文庫)

獲物の分け前 (ちくま文庫)