エリック・ロメール『我が至上の愛 アストレとセラドン』2007年/仏

これちょうど日本でやってますね。フランスでは2007年9月公開でしたが見事に逃して、私も今観ました。それが春へのあこがれが募りに募っている時だったのはとても良かった気がします。長い長い冬にあって、このすっばらしいフランスの春の気候を感じられるだけで幸福でした。撮影は5月、勢いよく育った新緑がまだ瑞々しい時。そこを通って木々を揺らす風もまた。私にとっては誕生月で、去年の5月にもこの季節に生まれた幸運を思いっきり噛み締めながら緑豊かな公園を歩いたり走ったりしたことを思い出しました。耳にするたび驚いて聴き入ってしまうほどよく澄んだ鳥の鳴き声も、フランスにきて感じた幸せのひとつ。草原や森のシーンでは、騒がしいくらいの鳥の声が聞こえた。それからあの衣装と結った髪の美しさは本当にたまらない。リボンの一本一本、ふわっふわの流れるような衣装、光に透けた髪の毛、結い上げられた髪の形、ぜんぶにうっとり。これは美容師さんにもおすすめしなきゃ。パステル調の色合いは、ルーヴルにあるボッティチェリの壁画のようで。フランス人らしい自然な顔つきをした俳優たちが、草や木や川が持っている豊かさと一緒に魅力をのびのび放っていて、それでいて慎ましく控えめで、そこにだけぽっと天上の世界が出現していた。言葉はちょっと難しかったけれど物語はだいたい追えたし、字幕なんてあったら邪魔だろうなと思うほど、画面全部が透き通った肌と布と葉と水と光の美しさに満ちた映画でした。
ただ一点、セラドンが美青年の顔からちょっとごつくなりかけていて、あと2才くらい若ければ、、、と思った。後半では若干グラムロッカーのような顔に…。ああいう顔の男の人だと20代半ばって結構顔が変わる時だろうから、キャスティングされてから撮影までの間にもちょっぴり育っちゃったんだろうななんて思う。日本のアイドルとかみててもそうですけど、若い時の美しさってはかないものですね。
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