par hasard, par bonheur...

ちょっと好きになったら最後、かなり振り回されることになる相手だろうとは分ってた。そこまでだなんて言ってないよと思ったところでもう手遅れ。もうこれはだいぶまいってるってことなんだ。そんな困った魅力の人が不意に、目の前に。
昨日、1日の終わりにまた散歩でもしながらクロワッサンをかじろうと街中をてくてく歩いていたら、背の高い黒いスーツの男性にすっと抜かされた。つばの広い黒い帽子をかぶっていたので、近くに住むユダヤ教徒だろうと思い気にしていなかったのだけど、それにしては大きくてむちむちしてて、なんだかあの人みたい…。と思った瞬間その人は脇の建物へ入っていくので隣に追いつき横顔が見えた。……。ピートだった。えーなんでここここここにいるの??!!!
あっけにとられているうちにピートは戸口に吸い込まれ、ロックされたドアの向こうの人に。今のピートだった!と連れに告げると、閉まったばかりドアを叩いてくれた。そしたらピートが扉をあけて出てきた。きっと同じ建物に用事があるのだと思われたのだろうと思う。きょとんとしてる。子供みたいな顔で。こっちはもう動揺しすぎてなにも言えない。どうしようどうしようという時に連れが、ピートですか?とストレートに聞いたらそうだよというので、大ファンだと告げて挨拶、握手。大きくてふかふかの手。ゴシップ誌が撮るピートなんかよりずっとリラックスしてて笑顔で、扉の枠に縁取られて、最高に素敵だった。けど不意打ちすぎて、こちらわけわからず。 会った時に伝えたいことなんて、何ひとつ用意してなかった。現実とも夢ともつかないくらい、つかの間の遭遇。自分の歩きが一歩ずれただけで成り立たなかった、それはもう信じられないほどの偶然の。さらにその直後に、ちょっとピートに似ていると思っていた友人とかなり久々にばったり会ったことなんて、ほとんどおまけみたいなもので。
興奮覚めやらぬまま帰宅。なんで来てるんだろうと最新情報を調べてみたら、今度の日曜にパリでサプライズライブがあってその30ユーロのチケットは今日売りでもう完売、ということと、さらに直前の告知で今日バーでライブがある、入場無料、ということがわかった。その時点で夜の9時。ライブは11時からと書いてある。もう行くしかない。
そこから、これまではメディアで見聞きするばかりだったピートのゲリラライブの夜がスタート。今日はちゃんと来るだろうことはわかっていたようなものだったので、安心して待っていられた。結局12時過ぎに現れて、1時間半近く弾き語りのスタイルでライブを披露してくれた。シークレットだけあってイングリッシュパブがちょうど満杯になるくらいの人手で、とはいえそれでもぎちぎちで、ライブ中にはかなり押しつぶされもしたけど、背が低いので前の方に陣取らせてもらい、比較的至近距離から観ることができた。ギターを抱えて歌うピートはとても美しかった。リバティーンズの曲も結構やっていて、半分かも知れないけど夢が叶ったじゃないか、と思った。それもこんな風に唐突に。全部が全部ピートのペースで、何度も何度もやられたなあと思った。
こんな夜の次の日は、ちょっとだけ悲しい。昨日を思うと泣きそうになる。でも次があるんだ。7月のLa Villette。